駅チカのアートスペース「高崎市美術館」探訪

みんな、美術館に行きたいかー!!

 

往年のクイズ番組のような始まりですが、高崎市美術館にやってきました。高崎駅から徒歩3分の好立地に構える美術館で、年に5回も企画展を実施しています。

今期のテーマは「動物がつむぐ物語-生命(いのち)あるものたちの造形-」、今回は学芸員さんによるギャラリートークに参加し、企画展の見どころを伺ってきました。

 

 

建物の1Fから3Fまでが展示スペースとなっており、5つの展示室に分かれています。1Fは特集展示として高崎在住の彫刻家 下山直紀さんの作品が4点展示されています。企画展のメインビジュアルになっている作品《Atoma/Kenon》は、ボルゾイ犬をモチーフとする目を引く彫刻です。動物の姿を通して、作者自身の姿を反映させるという制作の信念が表れており、毛並みの荒々しさがここに実存していることを強く感じさせる作品です。


下山直紀《Atoma/Kenon》2022年 作家蔵

2F以降は美術館の収蔵作品を展示しています。ギャラリートークでは高崎にゆかりある2人の作品を紹介いただきました。1人は群馬の近代美術の最重要人物である山口薫です。ピカソやシャガールのいた時代のパリへ留学し最新の美術を受け、独特の抽象表現を始めます。その抽象表現が一つの到達点をみたのが本企画で展示されている《牛の頭》です。

 

もう一人はコレクションの中で動物作品では欠かせない画家、松本忠義です。シェパード犬のブリーダーをしていた松本らしい、犬の日常を切り取った《犬達の窓》が展示されています。また晩年の作品《台所風景》は、印象的な朱色に台所の様子が描かれており、女性や猫、フクロウはすでに亡くなっているものの心の風景として表されています。そのように捉えると女性の表情や動物の姿がぼかされていることに意味を感じます。


松本忠義《犬達の窓》1976年 高崎市美術館蔵


松本忠義《台所風景》2006年頃 高崎市美術館蔵

 

高崎市美術館には、市の文化芸術の振興に大きく貢献した実業家 井上房一郎氏の旧邸宅が保存されています。軒の深く設計された屋根が特徴的で、見学当日はあいにくの雨でしたが濡れることなく見学ができました。内部は当時の調度品がそのまま残されています。はさみ状トラス構造を用い、天井を高く見せるとともに地面と床の高さを一般の日本家屋より低くすることで、部屋から地続きで庭につながるように見せ、部屋をより広く見せる設計になっています。和室からは紅葉が見え、四季折々の自然が邸宅を取り囲むようになっていました。

群馬音楽センターを設計したアントニン・レーモンド氏の邸宅を写した建物として知られており、二者に深い親交があったことを知らしめる建物とも言えます。

 

高崎市美術館・タワー美術館館長の塚越さんは「駅の東西に(美術館が)あるからこっち(高崎市美術館)を見たら向こう(タワー美術館)も、そうすると途中でお昼食べようとなるでしょ、そういうことが高崎の町を元気にする、だから両方とも見たいなという企画を考える。」と語り、「駅から近いのはアドバンテージ、でも企画がつまらなければ来ていただけない。だから行きたいと思う美術館になるように努力している。」と企画づくりへの強い意気込みをいただけました。

 

今回取材した企画展の会期は令和5年6月11日(日)までの開催となっています。また、次回のギャラリートークは令和5年6月4日(日)に行われます。詳しくは高崎市美術館HPより

 

次回はタワー美術館にお邪魔したいと思います。

※写真は許可を頂いて掲載しています。

記事作成:オオスミウム(経済学部経済学科3年)